荘厳という名の夜
2008年 10月 15日
行って来ました。
娘と一緒に。
吐く息も凍る、しんしんとした夜の森。
ライトアップされた東照宮五重の塔の真下に、遮蔽物なしで組まれたステージ。
流れる雲に見え隠れする白く丸い月。
素晴らしい舞台だった。
透明な歌声は、綺麗に空気に溶け込んでいた。
彼のライブとしては、最高の出来とは言えなかったかも知れない…。
あれだけの舞台を与えられて、もっと壮大に実力を出し切ったら、あの2倍3倍の世界を作ることの出来る人なのに。
何故、ふと、“うわのそら”の瞬間が出て来てしまうのだろう。
“厳か”としか言い様のない舞台空間に、畏れ、緊張し過ぎたのかなあ。
でも。
甘いかも知れないけど、私は、あのいつも不安定な彼をも認めたいと思う。
FCツアーでは、直太朗のことが大好きな気心の知れたファンだけに囲まれて、MCが間(ま)だらけでも、焦らず楽しんでやっていた。
リラックスして伸び伸び歌っていた。
CCレモンホールの楽日も、泣きながらもしっかり乗り越えた感じがあった。
だから、今回、また何があったのか解らないけれど、長い目で見ていきたいなと思う。
森山直太朗は、素質に恵まれ、本当に力のある人だ。
彼の歌の美しさと表裏一体である、繊細過ぎるところや、気の小さ過ぎるところは、いつか彼なりに克服すると思う。
それは彼自身にしか出来ない。
“舞台”という道を選んだ者の宿命として。
私(私達)に出来るのは、温かく応援し続けていくことだけ。
「生きてることが辛いなら」は、今まで聴いた中で最高だった。
アンコール曲「花」で、デッカイ蛾が直太朗の回りを飛び回って、胸元に止まったりもして、めちゃくちゃ怖がって気が散っちゃってて、可愛いかったよ。
夜の森の音楽会らしいアクシデントで。
『プロとしてどうよ』みたいな目でみたら、蛾事件(!?)も含めて直太朗はまだまだ未熟だ。
でも、あの素晴らしく高貴な五重の塔と、それをとり囲む鬱蒼とした夜の森の懐に抱かれた時間を、直太朗と、あの時あの場に居た1200人の人達と共有出来たことは、私の人生の歴史の一頁として心に刻みたい。
再びあることじゃないから。
それは直太朗にとっても同じだろう。多分。
彼が、最後に五重の塔に向かって深々と頭を下げていたのは、
「ありがとう」なのか、
「いつかもう一度ここで歌わせてください」なのか。
私はもうすっかりいい年だけど、でもまだまだこれから成長出来る。
30代に入ったばかりの彼なら尚更のこと。
様々なシーンを、心に瞼の裏に刻みつけながら、共に成長していけたら…。
「そんな風にあれたらいいなと思う~♪」
亜砂子